建造物の評価と保存活用ガイドライン
日本建築学会から標記ガイドラインが発表ました。
建築学会では、国際文化会館や文化学院本館などの保存活用に関して要望書を提出しており、そこでの議論をベースにガイドラインを検討したそうです
このガイドラインでは、”五つの基本的価値”として次の項目を提示しています。
---(転載)
①歴史的価値
建造物は、人類の活動の所産として、広く歴史のなかで価値を持っている。その価値とは、建設年代が古いことによって生じる価値を基本とし、現在までの時間的経過によって加えられたさまざまな価値を含む。そこには、伝統・歴史的様式が継承されており、社会のできごとの痕跡や個人の記憶が留められている。建造物が、巨大な記憶装置となっているところに見出される価値である。
②文化・芸術的価値
建造物は、人々の構想力と想像力の所産であり、そこには、社会と人々の生活が表現されている。それこそが、建造物の持つ文化・芸術的価値である。文化的価値とは、建造物に込められた生活や社会の姿に宿るものであり、われわれの社会総体の到達点を示すものである。芸術的価値とは、その時代の新しい美や表現、成熟し
た空間などの軌跡に宿るものである。
③技術的価値
建造物には、構造・材料、構法・施工、環境・設備に関する技術が用いられている。技術の発展は、過去の技術の積み重ねと技術開発によって生じるものであり、それぞれの建造物で用いられた技術の総体によって今日の技術が存在している。したがって、それぞれの建造物が持つ技術的な特徴を評価することで、技術の変遷と発展における建造物の位置づけを図り、価値を把握することができる。例えば構造技術では、古くから発展してきた木造技術、近代以降における煉瓦造、石造技術、鉄骨造と鉄筋コンクリート造技術の導入、さらに、建造物の耐震・耐風、耐火、高層化、大スパン化に伴う技術、などである。
④景観・環境的価値
建造物には、その周囲の景観や居住環境との関係で見出される価値がある。建造物が周囲の景観に配慮し、良好な居住環境の形成に寄与している点を評価して得られる価値である。例えば、建造物が街並みと調和し、あるいは、ランドマークとしての役割を果たしていることなど地域の景観形成に寄与していること、日照など物理的な居住環境の確保やアメニティの創造に果たしていることなどである。そのような建造物が保存活用され続けていくことは、景観・環境にとって極めて重要である。
⑤社会的価値
建造物は、地域社会の活性化やコミュニティの成立にとって重要な社会資産である。すなわち、あらゆる建造物には公共性があり、生活の基盤施設としての価値をもつ。建造物の用途・機能が社会に与える影響や、社会に対して果たしている役割に着目して建造物を評価する。さらに、地域社会の変化や地域の近代化のなかで建造物が果たしてきた役割も同じ視点から評価される。加えて、このような価値を持つ建造物を保存活用し続けることは、地球環境問題の解決に対する重要な貢献となる。
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建造物の保存活用を、従来重視されてきた歴史的資源としての価値保存という視点だけでなく、”地域社会の活性化やコミュニティの成立にとって重要な社会資産である”、”地球環境問題の解決に対する重要な貢献となる”と位置づけています。
■関連サイト
建築学会ガイドライン:http://www.aij.or.jp/scripts/request/document/070810-1.pdf
PennDesign Historic Preservation:http://www.design.upenn.edu/new/hist/index.php
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