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まちの美しい風景と経済成長の関係性/Leisure Amenities and Urban Growth

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今年の3月に発表された、フィラデルフィア連邦準備銀行とMITの研究者が調査した都市の美しさと経済成長に関する レポート ”Beautiful City: Leisure Amenities and Urban Growth” の備忘録 主な内容は以下の通り 現代の都市計画の理論ではレジャーアメニティーを提供する都市は、特に高度なスキルを持つ住民とその雇用者を中心に人口を引き寄せると考えられているが、直接的な論拠は示されていない。 そこでPanoramio(既にサービス終了、今はインスタグラム)を用いて世界中の旅行者が撮影した全米各地の300万枚の写真を解析し、美しい都市を調べるとともに、18万ものアンケート調査によって、世帯年収や年齢などどのような属性の市民がどの都市を観光したのかを調査した。 分析結果から都市の美しさは規模ではなく、より多くの公園や歴史的建造物、水辺や山への近接性、澄んだ空と降雨の少なさも影響していることが分かった また、低い税率と同様に美しい都市は人口増加の効果があることが示された。 美しい都市は、特に供給弾力性のないマーケットで、高学歴住民を惹きつけより大きな不動産価格の上昇がみられた。 例えば、ピクチャレスクな場所が他の2倍ある都市(美しい都市)は1990-2010にかけて人口と雇用が1割増加している。 同様に美しい都市の上位25%は不動産価格が下位よりも16%高かった。 公園やレクリェーションへの投資を10%増やすと観光産業の雇用が1.3%増加すると推定 ただし、ジェントリフィケーションは課題 この研究ではインスタグラムに適した地区をCBDsならぬCRDs(中央レクリエーション地区 :central recreational districts)と定義し、それが都市の魅力であると説いています。 美しさに注目したまちづくりを進めることで→生産性の高い人と産業を引き寄せ→成長した経済と税収で→で手ごろな価格の住宅を用意しジェントリフィケーションに対応するような都市成長モデルを議論できる重要な研究レポートと感じました。日本の都市に本手法を適用しても面白い結果が出るかもしれませんね。

Highly Interactive Innovation District in Ho Chi Minh City/イノベーション地区構想

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ベトナム・ホーチミン市の Innovation District構想コンペの 結果発表 の備忘録 選ばれたのは米国のSasaki とシンガポールのEn Cityの合同チームでした □両社のサイト http://www.sasaki.com/blog/view/1218/ http://encity.co/sasaki-encity-team-wins-the-1st-prize-for-hiid-competition/ (sasakiのサイトから転載) プロポーザルでは以下の6つのイノベーションホットスポット”six innovation hotspots for catalytic investment”が提案され、地域の経済成長、産官学連携による多様なイノベーションエコシステムの構築などを目指しています。 The Thu Thiem FinTech Hub:金融サービスに関連するネットワークと資本とアイディアの機会を提供するハブ  The Rach Chiec Sports and Wellness Hub: ウェルネス産業関連のハブ The Saigon Hi-Tech Park and Automated Manufacturing Hub :ハイテク産業と研究機関のハブ The National University IT & EduTech Hub:教育関連ハブ The Tam Da EcoTech Hub :農業技術、食品加工、自然環境保全に関連するハブ The Truong Tho Future Hub :スマートシティ実証のハブ 一方、開発により高まる洪水リスクに対応してグリーンインフラや高台への産業移転などレジリエンスを高める4つのアプローチも提案されています。 今後、政府の関連部局はじめ利害関係者と調整をすすめ都市計画と設計戦略プランを作成していくとのことです。

LI Awards 2019

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英国Landscape Instituteが実施しているアワードの2019年度ファイナリストと受賞者が 発表 されています。 今年は海外からの40作品も含め全体で180ものエントリーがあったとのことで力作ぞろいです。 受賞式のスピーチ 個人的に気になったプロジェクトを以下にスクラップします。 〇Pioneering Digital Innovation/Arup ランドスケープチームのデジタルイノベーション https://my.landscapeinstitute.org/case-study/pioneering-digital-innovation/32e546ca-2ce5-e911-a812-00224801cecd 〇What’s Growing On The Greenway/The Paul Hogarth Company Limited 専門家と地元住民とのランドスケープに関する合意形成のためのコミュニケーション (会長賞受賞) https://www.eastsidepartnership.com/news/whats-growing-greenway https://east-side-arts.myshopify.com/products/whats-growing-on-the-greenway https://www.trendsmap.com/twitter/tweet/1200092759018881025 Valencia Parque Central/ Gustafson Porter + Bowman バレンシアの作家の詩‘Water full of wisdom’から着想したまちづくりプロジェクト http://www.gp-b.com/valencia-parque-central Marlborough Primary School/ Macgregor Smith Landscape Architects 密集市街地における学校プロジェクト http://www.macgregorsmith.co.uk/project/marlborough-primary-school/ Shropshire Landscape and Visual Sensiti

交通インフラの更新と地域活性化/Presidio Tunnel Tops project

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米国のサンフランシスコ市内からゴールデンゲートブリッジにつながるドイルドライブも安全性が問題となり、様々な議論の結果、新たに「プレシディオパークウェイ」として再整備することになりました。 もともと高架道路であったドイルドライブにより景観が阻害され、海や緑地と分断されていたプレシディオに整備される新たな道路は、覆土により地下化され、その上部には新たな公園:プレシディオトンネルトップスが誕生します。(完成予定は2021年) 今月、公園の地鎮祭があり関連する各種情報が公開されています ■プロジェクト概要 ■公園の設計者ジムコナーの解説 ■総合サイト: https://www.presidio.gov/tunnel-tops# キャンプファイヤーサークル、ゴールデンゲートメドウ、パークランドオーバールック、そしてフィールドステーションやラボなど子供からシニアまでが利用できる、魅力的な施設が計画されています。 予算に関しても8500万ドル以上の大きな寄付があつまっているとのことです。 わが国では高度成長期に整備された交通インフラの維持・補修コストの増加が見込まれており、状況次第では更新や撤去などのオプションも議論されるケースが増えました。 ニュースによると本プロジェクトは30年近く前から議論を続けてきたとのことです。地域インフラの将来計画に関しては、思い切った代替案も含め社会・経済・環境など幅広い視点で柔軟な検討継続することが必要だと改めて感じます。 ■関連サイト 首都高地下化:https://www.data-max.co.jp/article/32486 首都コウサク:https://www.kajima.co.jp/news/digest/feb_2015/searching/index-j.html

ランドスケープへの投資の価値/The Site Commissioning White Paper

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2019年度のASLA awardsが発表になりました。 今年も選りすぐりのプロジェクトが表彰されており、今後の業界の動向を見極める上でも必見と思います。 中でも特に印象的だったのがリサーチ部門の”Site Commissioning”、土地利用計画を進める上でのサイトコミッショニングプロセスを示す白書が受賞しています。 建設業界におけるコミッショニングとは、発注者や利用者が求める建設プロジェクトへの要求性能を実現するために従来の建設工程に加味されるプロセスです。具体的には要求性能を文書として示し、その通りに企画、設計、建設、運用されていることを検証する行為となります。 今回受賞したサイトコミッショニングは、ランドスケープ建設が環境的、社会的、経済的に価値ある投資である事を証明するメカニズムと記されています。 Site commissioning —the process of establishing and then field-verifying performance goals—is a mechanism for proving that investment in constructed landscapes is environmentally, socially, and financially worthwhile.  本白書”The Site Commissioning White Paper”はランドスケープアーキテクトらが協力しGSA(U.S. General Services Administration)が発行しています。建築物のコミッショニングなどの関連文献調査や水、材料、人間の健康など7つのワーキングの設置、そして、専門家による試行などを通して本コミッショニングの有効性を確認したとのこと。 白書は下記サイトからダウンロードできます。 ランドスケープの効用に関する様々なデータやコスト、メカニズムなどが美しい写真とダイアグラムで紹介されており、コミッショニングに関わる専門家だけでなく環境を学ぶ方にも参考になる資料と思います。 トリプルボトムラインをはじめ持続可能な土地利用を進める上で、本白書で示されたようなデータ駆動型プロジェクト監理手法は積極的に活用すべきと感じました。 ◆参考サイト 白

Superblocksと健康の関係/バルセロナのまちづくり

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スペイン・バルセロナでは” Superblocks ”モデルを用いた歩行者優先都市実現に向けた社会実験を実施しています。 これは、スーパーブロック(道路で囲まれた一街区)の内部の車の通行を制限し、これまで車道として利用されてきた街路スペースを、地域住民が選択したスポーツやイベントなど別の用途に活用するプロジェクトです。 2016年に開始したこの取り組みは市内で年々エリアが拡大しており、最終的には市内の70%にスーパブロックスゾーンを展開する計画となっています。 この社会実験は、CO2の削減や、交通安全などの便益が期待される一方、車が遠回りになる、不便、夜間の治安が悪くなるなどの否定的な意見もあるそうです。 そのような議論に一石を投じるスーパーブロックモデルと健康の関係を評価した論文が9月に公開されました。 タイトルは「 Changing the urban design of cities for health: The superblock model 」 スペイン、アメリカ、オーストラリアの研究者らの共著となっています。 主な内容は以下の通りです 20歳以上のバルセロナ市民1,301,827人を対象にhealth impact study (HIA) 手法を利用して便益を評価した パラメーターは5つ、air pollution (NO2), traffic noise, physical activity, green space, and temperature. その結果スーパーブロックスプロジェクトが667人/年の早死にを防ぎ、住民一人当たりの平均寿命を約200日延ばし、年間の経済便益(節約効果)は17億ユーロと推定された。 健康上の利点は、NO2減少(291人/年)、騒音減少(163人/年)、熱環境改善(117人/年)、緑地開発(60人/年)の早死防止と示されています スーパーブロックを実装することで、健康に関する便益が生まれることが推定された。この手法は環境問題や気候変動への対応を課題とする他の都市への展開も期待される。 バルセロナといえば観光公害で有名な場所のため、車を締め出すには観光業への影響など様々な課題があったと思います。 社会実験を通して多面的かつ科学的な視点でまちづくりを議論する取り組みは、社会が

都市と農業の関係

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アマゾンドットコムは米東海岸ワシントンDC近くのペンタゴンシティに第二本社(HQ2)を建設すると発表しています。これに対して、地元の 都市農業グループFOUA が本社キャンパス敷地の2%を都市農業スペースとして利用するように求めたという報道がありました。 HQ2への 要望書 では、「アマゾンと地元が持続的でバイオフィリックな開発を行うチャンス」と記され、都市農業スペースを設置することにより以下のメリットがもたらされると説いています。 ● Aesthetically appealing, biophilic focal point event space for Movie nights, public or private receptions, exercise classes, etc. ● STEM plant lab for K-12 research ● Public demonstrations of growing sustainable techniques & methods ● At-scale food production for distribution to local food banks ● Incubator for urban agriculture-focused start-ups ● Encourage public interaction with local food systems 今回に限らず、多様な人が交流し環境課題も大きい都市において農的な土地利用を行う提案は世界中で発表されています。(例えば以下の動画) 単なる食糧生産や緑視の確保だけでなく、都市住民のQOL向上に資するバイオフィリックな空間整備は、今後ますます増加するのではないでしょうか。

ユニバーサルデザイン原則/ASLA

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ASLA(米国造園家連盟)から近隣開発などにおけるユニバーサルデザインのガイドや原則が発表されています。 ユニバーサルデザイン原則は以下の要素が示されています Accessible:全ての公共スペースに、身体的・精神的・認知能力に関係なくアクセスできる Comfortable: 安心感に加え包括的な帰属意識(an inclusive sense of belonging)が必要 Participatory:障害を持つ方や医療関係者と協働 Ecological:生物多様性を意識した自然との触れ合い機会の提供 Legible:明解でわ かりやすいデザイン Multi-Sensory:  視覚だけでなく聴覚や触覚も活用 Predictable:快適性や安全性確保のため、あらゆる年齢や能力の人に予測可能な空間を提供 Walkable / Traversable:  車だけでなく歩行や車いすのため広い歩道や自転車レーンを提供 また、ガイドは以下の5分野が公開されています 近隣/ Neighborhoods 街路/ Streets 公園や広場/ Parks and Plazas 遊び場/ Playgrounds 庭園/ Gardens 例えば、遊び場編では以下の視点が紹介されています(抜粋) ・Multiple forms of play:様々な感覚を活用して遊ぶ空間 ・Landform design:子供が登ったり転がったりジャンプしたり滑ったりする空間 ・Ease of access:視覚をサポートするための地面と遊具の色分けや、緩い傾斜など複数ルートの設定 ・Non-toxic, non-thorny plants: 高アレルゲンの植物を使わない ・Range of sensory engagement:刺激の受け止め方の多様性に対応するため、大きな魅力的な空間だけでなく、小さく静かな場所も用意する ・Materials:静電気を減らすためにプラスチックよりスチールを使うなど ・Accessible equipment:全ての子供がアクセスできるわけではないが、車いすでアクセスできるブランコを用意するなど出来るだけアクセス可能にする ・Interpretive signage:

Design with Nature Now/関連情報

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ランドスケープ関連のベストセラー書”Design with Nature”の発行50周年を記念して、ペンシルベニア大学で Design With Nature Now Conference が6月20-22日に開催されました。 貴重な議論が交わされているので関連情報を備忘録として貼り付けます ■総合案内の HP ■基調講演及び鼎談の動画 気候変動、人口の都市への集中、科学技術の発展など今何が起きているのか、これからどんな方向に向かうのかが議論されています。 Design With Nature Now Conference Keynotes from PennDesign on Vimeo . ■関連する展示会の 情報 図書館の蜂のデコレーションが素晴らしい! (写真はKarin Hananel撮影を転載) ■マクハーグセンターのFB https://www.facebook.com/pg/McHargCenter/posts/?ref=page_internal ■本国際会議の紹介動画 Design With Nature Now from PennDesign on Vimeo . ■書籍 今年の10月に発行予定の書籍” Design with Nature Now ” https://mcharg.upenn.edu/book ■CITYLABの紹介ブログ https://www.citylab.com/perspective/2019/06/landscape-architecture-design-with-nature-ian-mcharg-books/590029/

注意力・配慮力と自然の中での休息/ バイオフィリックデザイン+α

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仕事の生産性向上の重要な資源である、注意力の向上(Attention Enhancement) が、電子デバイスの使用によって損なわれる一方、公園での休息など自然との触れ合いにより回復するが、そこには+αの工夫が必要という趣旨の論文の備忘録 論文タイトルは”How to Waste a Break: Using Portable Electronic Devices Substantially Counteracts Attention Enhancement Effects of Green Spaces” https://aslathedirt.files.wordpress.com/2018/07/0013916518788603.pdf 著者は香港大学のBin Jiang先生(イリノイ大卒業)、イリノイ大学の Rose Schmillen先生、 William C. Sullivan先生 主な内容は以下の通りです Attention(注意力・配慮力)は業務を行うために重要な資源。これが低い人は重要事項を見逃し、イライラしやすく自己管理に悩む。失言も増え、人間関係にも苦労する可能性が高い。 女性50名、男性31名、年齢17-35歳の81人の被験者に対して緑により注意力向上効果と電子デバイス使用の関係性に関して調査を実施した。 参加者は10分間計算と暗記を行い、その後15分間、4種類の場所で休息を行った(下記画像参照)。休息中参加者の何人かはSNSなど仕事以外の用途でラップトップを使った。また、ラップトップを持ったまま休息したグループ、持たずに休息したグループを設定した。そして、休息後に注意力に関する再テストを行った。 休息後に注意力が回復した唯一のグループはラップトップを持たずに緑の中で休息した人であった(下記グラフ参照)。 よって、注意力を回復させるためには自然と触れ合える緑地を準備するだけでは不十分で、電子デバイスをわきに置くようななんらかの工夫を行う必要があるとの根拠が示された(結論) バイオフィリックデザインを推進する論拠として、「緑が見える、緑と触れ合える空間を整備することでストレス回復効果が発揮される」等の研究論文は数多く出ています。 今回、本研究が示した、自然の中での過ごし方が注意力の回復に影響すると

脳の活動(デフォルトモードネットワーク)とバイオフィリックデザイン/自然音の効果

バイオフィリックデザインは緑被率など視覚的な観点が主に議論されますが、自然の香り(嗅覚)や触れ合い(触覚)、自然の恵み(味覚)、音(聴覚)など五感を意識した総合的なアプローチが重要なことは論を俟ちません。 今回は英国オックスフォード大学の研究者らが2017年に発表した聴覚関連のエビデンスに関する論文に関してメモします。 論文タイトルは” Mind-wandering and alterations to default mode network connectivity when listening to naturalistic versus artificial sounds." 最近話題のデフォルトモードネットワークと音との関係をfMRIなど最新の計測装置を活用して調査しています。 主な概要は以下の通り 自然音や緑に囲まれた環境は、人工的な音と環境よりも快適であることは、既知の事実。例えば Guastavino, C.   The ideal urban soundscape: Investigating the sound quality of French cities .  Acta Acust. united with Acust.   92 , 945–951 (2006). 本実験では、21-34歳の17人の被験者に、身近な自然音、聞きなれない人工音、身近な自然音、聞きなれない自然音、無音の5つのサウンドスケープを5分25秒曝し脳の動きをモニタリングした。 同時に、被験者にアンケート調査を実施し、心地よさや注意力と音との関係を検証した 脳の働きに関してはfMRI を用いてDMNに関する検証を行った(→DMN(デフォルトモードネットワーク)はさまざまな脳領域の活動を統括するのに重要な役割を果たしていると言われており、認知症やうつ病にも関係があると言われている。) 人工音環境での活動は自然音環境と比較して被験者の注意力が劣っていた。 主観的なアンケート調査では、自然音のほうが心地よさが高く、人工音が注意散漫になることが大きな差として示された。 本実験結果では、身近な自然音に触れることで、DMNの機能が(良い方向に?)変化することを示すことができた。これは人が自然環境と触れ合う事が健康便益の助けになるとの説明に

バイオフィリックデザインのエビデンス/自然との触れ合い関連

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今月発行になった、人の幸福や健康と自然の中でのレクリエーションとの関係性を調査した論文の備忘録。 筆者はUniversity of Exeter Medical SchoolのMathew White博士ら タイトルは”Spending at least 120 minutes a week in nature is associated with good health and wellbeing” バイオフィリックデザインに関連している方にとって興味深いタイトルではないでしょうか。 (概要メモ) 過去7日間の自然との触れ合いと健康及び幸福の関係を自己申告で調査 参加者は19806人、2014年から2015年に実施。 地域差などは考慮し住宅の前庭のような場所で過ごした時間は参入せず 過去①週間に自然との触れ合いが無い被験者と120分以上あった被験者を比較すると、健康や幸福感の高まりに以下の有意の差が出た。 (e.g. 120–179 mins: ORs [95%CIs]: Health = 1.59 [1.31–1.92]; Well-being = 1.23 [1.08–1.40]). この関連性は200-300分でピークに達し、それ以上メリットは増加しなかった このパターンは高齢者や長期的な健康問題を抱えるグループも含め同じ傾向であった 自然との触れ合い時間(120分間)の内訳は関係なし。(一度に長い時間か短時間で数度かは関係なし) この研究成果は、健康のための自然との触れ合いに関するガイドライン策定に有益だ 人と自然の健康に関する研究は被験者数が課題となりますが、本研究は自然環境モニタリング調査に参加したボランティアを対象とすることで、2万人近い被験者を確保したようです。 本論文は公開(2019/6/13)されており全文は こちら で入手可能です https://www.nature.com/articles/s41598-019-44097-3 エセックス大学メディカルスクール : https://www.ecehh.org/

ランド系大学の学費と投資対効果

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MLA ROIというタイトルで、米国のランドスケープ学生が減少している理由を、投資対効果(投資利益率)から解説している記事がLAM誌で紹介されていました。 大学の学費を投資、将来収入をリターンとしてとらえたときに、どのようなROI(投資利益率)になるのか? を説明しています 主な内容は以下の通りです 米国のランド分野の就業人員数は2006年の45,000人をピークに、2016年には2.5万人を下回る水準まで減少している ASLAのデータによると2013~2017年の間にBLAプログラム(学士)の入学者数は15%減少した。また、MLAプログラム(修士)の入学者総数は変わらなかったが、国内の志願者は16%減っており、海外留学生が定員をカバーしている。 平均的なMLAの学生は$39,284の学生ローン(DesignIntelligenceデータ)を抱えて卒業し、平均年収$65,760(労働統計データ)を得るので借金に対する収入は1.67の倍率となる。 これに対し、建築分野は1.72、インテリアデザイン分野は1.32となっている。また大学院生の入学者数は建築分野も10%減少、都市計画分野も11%減少している。 一方、IT分野は平均年収が$84,580であり、一部では10万ドルを超えている。IT分野は学費がランド系分野と同レベルのため、ROIから検討し、こちらに学生が流れたのではないか? BLAとMLAの比較では、MLAを取得したからと言って生涯年収が大きく上昇することはなく、実務経験を積むことが重要だとのコメントを紹介しています。 別の視点で、学費が年間5万ドルを超えるハーバードと1.2万ドルのカンザス州立大学も比較しています。この2校では卒業までの必要経費に4倍もの差があり、アイビーの学位が4倍もの価値があるのか?( Is an Ivy League degree really four times more valuable? )とのコメントが紹介されています。 その他、ランド分野での女性の活躍状況やオンライン教育の発展などに関しても、その課題などを説明しています。詳しくは本文を確認ください https://landscapearchitecturemagazine.org/2019/05/28/mla-roi/ こうしてみると

外遊びの重要性/Outside Play

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ニューヨークタイムズに” Making Playgrounds a Little More Dangerous ”と題した子供の発育と外遊びの重要性に関する記事が掲載されていたのでメモします 屋外で危険性のある遊び(risky play)が子供の心身の健康に大きな効用があることがいくつかの研究成果として示されています。 たとえば、ノルウェーの研究では外遊びが恐怖心をコントロールすることに役立つことが示されています。 https://www.researchgate.net/publication/249047571_Categorising_risky_play-How_can_we_identify_risk-taking_in_children's_play また、イギリスとアメリカの研究データでは固定遊具が少なく、ツリーハウスやのぼり場など一見危険な要素を持つ遊び場のほうが、滞在時間が長くなりケガも少ないとの結果が出ているそうです。 https://static1.squarespace.com/static/562e1f86e4b0b8640584b757/t/5a4cdf2f0d929722a0ed3085/1514987350174/LondonFullStudyReport.pdf 実際、外遊びに関する21の研究論文をレビューしたところ、以下のようなプラス効果が示されたそうです。  The systematic review revealed overall positive effects of risky outdoor play on a variety of health indicators and behaviours, most commonly physical activity, but also social health and behaviours, injuries, and aggression. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4483710/ 下記サイトでは外遊びの計画をステップを踏んで検討できるツールが用意されています https://outsideplay.ca/

バイオフィリックデザインのパイロットクレジット/LEED

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LEED 新築v4のバイオフィリックデザインに関する基準の備忘録 個人的にはクライテリアDやEが重要かと思います ---(原文転載) The five design strategies must address at least  one  of the following criteria: A. The project design provides regular access to  Nature in the Space  as defined in 14 Patterns of Biophilic Design (or  Environmental Features, Light and space, Natural Patterns and Processes , as defined in  Biophilic design: the theory, science and practice of bringing buildings to life, Table 1-1 ). B. The project design offers  Natural Analogues  as defined in  14 Patterns of Biophilic Design  (or  Natural Shapes and Forms as defined in  Biophilic design: the theory, science and practice of bringing buildings to life, Table 1-1 ). C. The project design has spatial properties that align with the  Nature of the Space  as defined in  14 Patterns of Biophilic Design  (or  Evolved Human-nature Relationships  as defined in  Biophilic design: the theory, science and practice of bringing buildings to life, Table 1-1 ). D. The proj

ノートルダム大聖堂のミツバチプロジェクト

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パリ市内では、オペラ座をはじめエッフェル塔やホテル、公園などで都市型養蜂(ミツバチプロジェクト)が実施されています。 フランスやドイツ、ベルギーなど欧州諸国では蜂蜜の一人当たりの年間消費量が500~1000g(日本の7倍程度)と言われており、蜂蜜のファンが多い事。歴史的に有名な養蜂学校がパリ市内にあり、養蜂技術が学べる場があること。加えて、市内の公園や家庭菜園で農薬の使用を禁止するなど養蜂のための環境が整備されていることなどが、パリ市内で都市型養蜂が広がった理由と考えられます。 先日悲劇的な火災が発生した、ノートルダム大聖堂にもミツバチの巣箱が3つ設置されていたそうです。 その状況が心配されていたのですが、空中写真で火災後も生き残ったことが確認されたと報道されています。 火災は残念ですが、ミツバチが生き延びたことはちょっとうれしいニュースですね 私の参加するミツバチプロジェクトも、4月から再始動しました。 今年も蜂蜜の生産だけでなく、ミツバチの健康管理と蜜源拡大、環境コミュニケーションを目的に展開するのでご支援よろしくお願いいたします。 ■参考サイト https://www.atlasobscura.com/articles/notre-dame-bees-survived-the-fire

野鳥の一斉調査~Global Big Day~2019年5月4日

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(引用: https://ebird.org (Artwork by Luke Seitz)) 野鳥の一斉調査の話題 昨年5月の調査では3万人以上が参加し7000種登録されたとのこと 今年は5月4日に開催されます 参加の手順は以下の通り 1.ebirdのアカウント取得→ Sign up here.   2.5/4に10分以上野鳥観察。裏庭でも可 3.見聞きした野鳥をebirdに登録。認識支援アプリはこちら→ Merlin Bird ID   4.世界中で登録された野鳥情報を閲覧→ Global Big Day page . 詳細はこちらで確認できます: https://ebird.org/news/global-big-day-4-may-2019 登録情報を見る限り日本からの 報告 はまだ限られているようですので、関心のある方は参加されてはいかがでしょうか? バイオブリッツと呼ばれるこのような手法は、アプリに興味を持つ方や、登録数ランキングを上げたい方など様々な動機付が期待でき、より多くの参加が見込めます。 また、毎年同じタイミングで継続調査することで、経年変化のモニタリングやデータ精度の向上など様々なメリットがもたらされると思います。 私も10年ほど前に開発したアプリ「ききみみずきん」を用い、チームの一員として同種の一斉調査を行った経験があります。 https://greeninfrastructurejapan.blogspot.com/2014/11/2012_30.html 当時は、参加者の募集方法やデータ精度、データ編集にかかるマンパワーなど課題がありましたが、仲間に恵まれよい体験をさせていただいた記憶があります。 Society5.0の時代ですから、 野鳥に限らず様々な分野でこのような取り組みを展開していきたいものですね ■参考サイト https://www.hcn.org/articles/climate-desk-online-privacy-is-for-the-birds https://ebird.org/home

Integrating Green and Gray : Creating Next Generation Infrastructure

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先月、世界銀行と世界資源研究所(WRI)から"Integrating Green and Gray – Creating Next Generation Infrastructure"というタイトルのレポートが発行されました。 従来のインフラにGIを統合することで、経済、地域、環境に便益を提供するとのことで、途上国の実例を中心に、多様な調査事例が報告されています。 たとえば、ソマリアの事例として深井戸よりもサンドダムを適用することで、建設や維持管理コストを削減できる事例などが紹介されています。 都市域ではUrban Stormwater Management(104p~)に、ワシントンDCやスリランカの洪水対策の事例が掲載されています。 本レポートは従来型インフラに生態系サービスを組み合わせることで干ばつや洪水対策を行う手法が幅広く紹介されているので、水関係のGI研究を行う際に有益なヒントを得ることができるのではないでしょうか。 個人的には、GIの特徴を説明した以下の2つの図が気になりました。 一つ目は横軸を時間軸、縦軸を便益とした際の、GIの特徴を示した図(33P)。 従来型インフラと比較してGIは効果を発揮するまで時間がかかるものの、中長期ではメリットも大きい特徴を説明しています。 2つ目はGIに関係するステークホルダーと多様な機能を説明している関係性マップ(47P)。 世界銀行からは、ほかにも関連するレポートが発行されているので要注目ですね。 ■参考サイト 報告書DLサイト: https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/31430 プレスリリース: https://www.worldbank.org/en/news/feature/2019/03/21/green-and-gray

Klyde Warren Park/高速道路から公園へ

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テキサス州ダラスのクライドウォーレン公園は、街を分断していた8車線の高速道路上部に設置した公園で”From Freeway to Greenway”と表現されたりしています。 この公園の機能は単に分断された地区を物理的に結び付けるだけではありません。屋外でジェンカやチェスができる施設、年間1300ものフィットネス、音楽演奏、環境教育などの無償プログラム、レストランやフードトラック、広大な芝生広場やイベントステージなどにより年間100万人以上が利用するそうです。 また、公園整備事業の予算$1億1400万の半分は寄付金でまかなわれています。 この公園の開園以来、周辺に企業や文化施設が増加し13億ドルもの経済効果とそれに伴う税収が上がったとのことです。 加えて公園に隣接する3エーカーの土地の価格は2008年の3200万ドルから公園完成後9110万ドルに増加したと推定されています。 本事業は2017年のASLA賞も受賞しています。周辺の賃料も上がっているようなのでジェントリフィケーションが気になるところですが、公園を核とした米国のまちづくり/地域活性化策は本当に参考になりますね ■参考サイト 公園の公式サイト: https://www.klydewarrenpark.org/ ASLA賞: https://www.asla.org/2017awards/327692.html 記事: https://theamericanscholar.org/at-play-in-the-fields-of-the-bored/#.XK5stJj7SUl クライドウォーレンパークのほか、NYのブライアントパークやハイラインなどを解説

バイオフィリックなまちづくり/The use of GIS to score biophilic urban developments and cities

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ESRI社の主催する2019 Geodesign Summitで発表されたプレゼンテーション資料として、GISを用いた”まち”や”建物”のバイオフィリック度の検討手法が紹介されています。 http://proceedings.esri.com/library/userconf/geodesign19/papers/Geodesign_13.pdf (非常にデータ量が多いで注意) 研究背景を要約すると以下の通りです 人間は農村部に居住し自然と直接触れ合ってきたが、現代社会では都市部に居住し自然との接点が減少した。 自然とのふれあいの欠如は、ストレスの増加、肥満、認知能力の低下、睡眠障害など様々な健康問題と関連している バイオフィリックデザインの特徴には、視覚的および非視覚的な自然の認知やわくわく感が含まれ、設計者はバイオフィリック(指数)の強弱に基づきデザインを検討する必要がある 資料には、公園や緑道などとの距離や人口密度などを重ね合わせバイオフィリック指数を算出する手法や、ビルの壁や窓、座席位置の関係から緑の可視状況を把握する手法(当然的側の席が指数が良くなる)が、カールスタイニッツのプランニングフレームワークとともに紹介されています。 GISの経験者であれば直ぐに再現できるレベルと思いますが、まちづくりにおけるバイオフィリックとはなにか?を考えるヒントになると思いました。 ついでながら、バイオフィリックデザインに関する建築家の紹介動画も張り付けておきます。 ■関連サイト https://www.esri.com/en-us/about/events/geodesign-summit/agenda/carol-mcclellan https://buildingproducts.co.uk/biophilic-building-design-impacts-physical-psychological-health/

2019年度カナダ造園家協会賞/CSLA national award winners

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先月 CSLA(カナダ造園家協会)から2019年度のCSLA national award winnersが 発表 になりました。 Awards of Excellenceに選ばれたのはStraub Thurmayr Landscape Architectsの  “Rooted in Clay – WY Garden in Winnipeg” リサイクル材などを利用して廉価に ”pleasant landscapes” を作り出したとのこと、非常に興味深い取り組みです。 (引用: https://www.csla-aapc.ca/awards-atlas/rooted-clay-wy-garden-winnipeg-mb ) その他の受賞作で個人的に興味深かったのは、 トロントのグリーンインフラ導入ガイドラインとして2017年に発行された Toronto Green Streets Technical Guidelines モンテッソーリ―の屋外遊び場として子供たちにさまざまな体験を提供する Vibrant, Daring, Ephemral, Wild - Casa Montessori & Orff School 使われなくなったドックを含め海岸線のインフラを再生した Breakwater Park カナダの環境デザインはなじみがありませんでしたが、日本でも 参考になりそうな革新的な提案も多く受賞しています。 今後も注目していきたいと思います。 ◆参考リンク先 https://www.csla-aapc.ca/sites/csla-aapc.ca/files/Winners%202019%20for%20communications.pdf

インセクトホテルを設置する理由/GIとしての昆虫巣箱

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庭の片隅に昆虫の巣箱を設置して、送粉者など有益な昆虫を誘致する取り組みはミツバチプロジェクトが有名ですが、リンゴ園のマメコバチなど様々な手法が存在しています。(写真はマメコバチのインセクトホテルを設置した様子) 欧米ではインセクトハウス/インセクトホテル/バグハウスなどと呼ばれ、ホームセンターでキットも販売されています。 ただし、日本では虫に対する抵抗感を感じる方が多く、インセクトホテルの設置に理解を得られない事も多々あります。 そこで、今回紹介するのは、インセクトホテルに取り組む理由を説明したサイト。 5 Reasons You Should Build a Bug Hotel & How to Do It 以下の5つの理由からインセクトホテルを推奨しています。(詳細はリンク先参照) 5 Reasons To Build A Bug Hotel 1. Broaden your understanding of nature 2. Beneficial insects need love too 3. Loss of natural habitat 4. Add interest to your garden 5. Provide therapeutic activities for young and old インセクトホテルはミニチュアハウスの小部屋に、昆虫の生態に対応して筒状、葉っぱ、綿、石ころなど様々な素材が配置されまさにホテルのような外観となります。加えて、カラフルなペイントを行っている事例も少なくありません。よって、庭への関心を高める(4番)という指摘は個人的に強く共感しました。 この5つの理由で挙げられているように、多様な機能・便益、低コスト、自然共生などの点で、インセクトホテルはまさにグリーンインフラと呼べるのではないでしょうか 本サイトでは、蜜源となる花を増やすなどインセクトホテルの作り方も紹介されています。自分で作りたい方には参考になると思います。 ちなみに、本取り組みの名称の件、インセクトホテル/インセクトハウス/バグハウスなど様々な呼ばれ方をしています。 一昨年インターンに来ていた英国の大学生に聞いたところ、大学の講義ではインセクトホテルと紹介されていると

グリーンインフラのROI/Chicago River system

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ウィスコンシン大学から川のグリーンインフラ化による経済効果を評価した、興味深いレポートが発表されました(2019/3/14) The Blue/Green Corridor: Establishing theIntersection between Economic Growth and Environmental Design  このレポートでは、blue/green corridorとしてシカゴリバーシステムを開発することにより、投資に対して1.77倍のリターンがあると説明しています。 具体的には年間1614人の新たな雇用を生み出し、川の水質や生物多様性、レクリエーション、公衆衛生を改善し、洪水や公害リスク、ヒートアイランドの低減が期待できるとのこと。 また、 Chicago River system  沿いの123,000もの不動産価値を調査し、グリーンインフラ化により15年間で住宅の価値が5%上昇するとの結果も発表されています。 これらをあわせ、15年間で$192,171,718/年(約211億円/年)の便益があるとのことです。 加えて、今回の評価に含まれていない他の効用と評価手法も紹介されています。 (引用: www.uww.edu/ferc/completed) 本レポートではデータ取得方法、評価手法、結果、参考文献などが紹介されており、GIのROI評価に取り組んでいる方には参考になるのではないでしょうか。

女子学生向け職能紹介/Landscape Architect | Ujijji Davis

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Career girls という米国の女子学生向けの職能紹介サイトで、Landscape Architect が紹介されています。 主な内容は以下の通り 仕事の内容 Landscape architects spend much of their time in offices, where they create plans and designs, prepare models and preliminary cost estimates, and meet with clients and workers involved in designing or planning a project. They spend the rest of their time at jobsites. 必要なスキル Analytical skills. Landscape architects must understand the content of designs. When designing a building’s drainage system, for example, landscape architects must understand the interaction between the building and the surrounding land. Communication skills. Landscape architects share their ideas, both orally and in writing, with clients, other architects, and workers who help prepare drawings. Effective communication is essential to ensuring that the vision for a project gets translated into reality. Creativity. Landscape architects create the overall look of gardens, parks, and other outdoor areas. Their designs shou

高速道路のグリーンインフラ化

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ニューヨークの老朽化した高速道路” BQE ”再生の話題 BQEは毎日144,000台の車両が利用しています。 その修繕方法に関しては様々な議論がありますが、今回の提案は高速道路を単に車両専用とするのでなく、球技場、ドックラン、自転車専用道などのある”公園”として再整備するものです。 本提案は、将来的な交通量の変化に対応するとともに、参考図のようなトリプルカンチレバーを用いて段階的にグリーンインフラ化するオプション提案となっています。 工費・工期や施工中の代替ルートの確保、地元住民の意見、将来的な交通量変化予測に対する考え方など様々な課題がありますが、将来を見据え活発な議論が交わされているようです。 文末のリンク先には韓国/清渓川やパリ/Georges Pompidou Expresswayなど高速道路をGI化した事例が紹介されています。ご参考まで (出展:DOT, brooklyneagle.com) 参考リンク: https://comptroller.nyc.gov/wp-content/uploads/2019/03/BQE-Proposal-Comptroller-Stringer.pdf https://brooklyneagle.com/articles/2019/03/13/stringers-dramatic-plan-to-turn-bqe-into-elevated-park-wins-praise/

農活動と健康/ がん生存者のライフスタイルと改善

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農/園芸活動が癌生存者のライフスタイルにどのような効用を与えるのかを調査した以下のレポートが報告されています。 Pilot Randomized Controlled Trial of a Home Vegetable Gardening Intervention among Older Cancer Survivors Shows Feasibility, Satisfaction, and Promise in Improving Vegetable and Fruit Consumption, Reassurance of Worth, and the Trajectory of Central Adiposity この調査は、米国アラバマ州の46歳以上の癌生存者42名に対し、無作為に園芸活動を行うグループと待機するグループに分け、身体能力や胴回りなどの身体指標、行動などを1年間調査したものです。 園芸活動を行う被験者には、トラブル対応をアドバイスする指導者や苗、種子、園芸用具が提供されています。 本調査の主な結果は次のようなものでした。 ・実験参加者の75%が園芸活動を継続したいと希望した ・胴回りは両グループとも増加したが園芸活動グループは+2.3cm,コントロールは+7.96cmとなり、胴回りの増加量の減少がみられた。(p=0.02) ・園芸活動グループは野菜や果物の消費量が増加した(実施前1.34→実施後2.34、コントロールは1.22→1.12) ・高齢の癌生存者に園芸活動は有効であり、食生活や身体の改善する可能性が示された。 ・ただし、サンプル数や被験者の偏り(女性・高学歴)があること、身体能力に関しては有意な差がみられなかったなどの課題がある 論文著者名を見ると本研究には栄養学をはじめ医師や植物学の研究者が参加しており、横断的な研究の重要性を強く感じます。 研究チームはさらに400人以上を被験者として継続調査中との事ですので、今後の報告も要注目です。

造園業の仕事紹介/A Day in the Life of a Landscape Professional

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米国の造園建設業協会(National Association of Landscape Professionals)が、新たに専門家教育のための 実習プログラム を開始するとのアナウンスがありました。 有給の見習い業務2000時間とオンライン教育144時間を通して、設置やメンテナンス、潅水など17の技術を習得できるそうです。プログラム修了後には認定資格が得られるとのことで、学生だけでなくセカンドキャリアを検討している人にもおすすめとのことです。 関連して職能紹介の サイト も開設されており、圃場の技師や芝生の管理士、ランドスケープデザイナーなど様々な仕事の内容紹介やキャリア選択を支援する クイズ なども用意されています。 興味深いのは各専門業種の収入目安を示す 資料 会社のオーナはなかなかの年収です サイト内に開設されている求人情報” FIND A LANDSCAPING JOB”でも、米国の様々な造園関連業種が発見できます。 米国の造園業界は30万人規模とのことですので、活躍できるポジションも多数用意されている模様です。

水再生循環を次の時代へ/立命館大学シンポジウム

表題のシンポジウムが2月25日に立命館大学びわこ・草津キャンパスで開催されます。 わたくしも、グリーンインフラと水再生循環システムというタイトルで、取り組んでいる水関連のプロジェクトや研究内容を紹介させていただく予定です。 参加無料で一般申し込み可能のようですので、関西方面の方はご検討ください。 プログラム内容や申し込み方法など詳細の リンク先はこちら です。 日時:2019年2月25日 13:30~17:10 場所:立命館大学ローム記念館5F会議室

Engineering with Nature(EWN)/自然インフラによるソリューション

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米国陸軍工兵隊(Army Corps of Engineers)から、” Engineering with nature: An Atlas ”という資料が1月に公開になりました。これには洪水リスクの軽減と回復力戦略のための自然インフラ活用方策のヒントが紹介されています。 関連の ハンドブック では河川・海岸整備や湿地保全などの水管理事業で自然インフラを活用した56もの事業が、美しい写真と共に紹介されています。 やはり写真は重要ですね、、 プレス会見の ニュース を読むと以下の様な説明がありました 本書は一般とのコミュニケーションツールとして発行した 世界中のプロジェクトを取り上げ、どのように連携しているのかノウハウをシェアし学びあうことが発行の目的 アトラスではEWNがもたらす複合的な機能(社会、経済、環境)を紹介 洪水リスクを低減するために、自然は多くの解決策を提示している 本書ではEWNの背後にある科学とエビデンスを伝えている サイトを見ると米国を中心にEUやインドネシア、ニュージーランドのプロジェクトも紹介されています。 しかし、残念ながら私が確認した限り日本の取組みは含まれていないようです。 米国陸軍工兵隊はワシントンDCで2000年初頭にレインガーデンの実証試験を実施する等、時代の最先端のエンジニアリング技術を提言している印象があります。 2020年頃にはEWNの新しいガイドラインも出るとの情報ですので、要注目です。

バイオフィリックなオフィスデザイン

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このブログのテーマの一つでもあるバイオフィリックデザインは、情報共有から社会実装フェーズへと移行しつつあると感じます。 今回はオフィス関連の情報をメモします。 マイクロソフト社は2017年にオフィスの一部としてツリーハウスを整備しました WIFIや電源なども用意されたツリーハウスは、単に業務空間を楽しく演出するだけでなく、従業員のメンタル面に好影響を与え、仕事仲間のコラボレーションが活性化する等生産性向上にも貢献しているとのことで、 公式サイト では以下のコメントが紹介されています。 Trees and plants secrete aromatic chemicals that impact our cognition, mental state, and even our immunity,  “For people to be the most productive and create the best products, we want them to have that opportunity for collaboration. Any employee can take their device outside, have a meeting—even in a treehouse—and be just as productive.” また、2018年にオープンしたアマゾン社のSpheresは非常に有名ですね L.L.Beanでは屋外のコワーキングスペースを 提案 しています 屋外空間での仕事に関するアンケート調査( The  L.L.Bean 2018 Work and the Outdoors Survey )も実施しており、以下の様なデータが示されています。 86%の室内勤務者がもっと屋外で時間を過ごしたいと望んでおり、65%が仕事が障害でそうできないと感じている。 ワーカーが感じる屋外で仕事を行う5大メリットは次のもの Improve their mood (74 percent) Lower their stress level (71 percent) Provide relaxation (69 percent) Promote health and wellnes

AIで都市林地図づくり

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CityLab記事 より 米国ではitreeなどのITツールと市民ボランティアを利用して市内の毎木調査を行っていますが、データ作成にかかる時間が課題となっています。 例えば、 ニューヨーク市の調査 (2015 STREET TREE CENSUS REPORT)では2年間で2200人のボランティアが参加したとのことです。 そのため、 Descartes Labs は人工知能に注目し衛星画像データから樹冠を抽出する機械学習モデルを構築しようとしています。 一般的な技術としてはこれまでNDVI(正規化植生指数)を利用し衛星画像を解析することで、植物と他の物体を区分してきました。さらに、高さデータを重ねることで、草本類と樹木を区別することが出来ます。 ただし、高さデータは非常に高価な為、開発者らはAIを利用して衛星画像のみから樹木を抽出するモデルを作ったとの事です。また、記事によると開発者はこれまでに2000以上の都市でこの手法を用いているとの事です。 -- たしかに、変化の激しい都市において樹冠をタイムリーに把握できれば、まちづくりを検討する上で非常に有益なデータとなるのでしょう。今後日本への適用も期待したい技術ですね。 ちなみに、私も10年ほど前に植生図と高さデータを利用して樹冠を把握する研究を行っていました。当時も高さデータは非常に高価であった記憶があります。 リモートセンシングとGISを利用した都市域におけるエコロジカルネットワークの評価手法に関する研究 : コゲラを指標種として 高解像度衛星データおよびレーザースキャナーにより測定した地表面高(DSM)や地盤高(DTM)データを活用することで屋敷林など都市域の小規模な緑地を把握できる 高さデータが非常に正確であったため、屋上緑化や屋根緑化を樹木と判別してしまい、あわてて土地利用データを重ねて修正するという笑い話もありました。ご参考まで