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脳の活動(デフォルトモードネットワーク)とバイオフィリックデザイン/自然音の効果

バイオフィリックデザインは緑被率など視覚的な観点が主に議論されますが、自然の香り(嗅覚)や触れ合い(触覚)、自然の恵み(味覚)、音(聴覚)など五感を意識した総合的なアプローチが重要なことは論を俟ちません。 今回は英国オックスフォード大学の研究者らが2017年に発表した聴覚関連のエビデンスに関する論文に関してメモします。 論文タイトルは” Mind-wandering and alterations to default mode network connectivity when listening to naturalistic versus artificial sounds." 最近話題のデフォルトモードネットワークと音との関係をfMRIなど最新の計測装置を活用して調査しています。 主な概要は以下の通り 自然音や緑に囲まれた環境は、人工的な音と環境よりも快適であることは、既知の事実。例えば Guastavino, C.   The ideal urban soundscape: Investigating the sound quality of French cities .  Acta Acust. united with Acust.   92 , 945–951 (2006). 本実験では、21-34歳の17人の被験者に、身近な自然音、聞きなれない人工音、身近な自然音、聞きなれない自然音、無音の5つのサウンドスケープを5分25秒曝し脳の動きをモニタリングした。 同時に、被験者にアンケート調査を実施し、心地よさや注意力と音との関係を検証した 脳の働きに関してはfMRI を用いてDMNに関する検証を行った(→DMN(デフォルトモードネットワーク)はさまざまな脳領域の活動を統括するのに重要な役割を果たしていると言われており、認知症やうつ病にも関係があると言われている。) 人工音環境での活動は自然音環境と比較して被験者の注意力が劣っていた。 主観的なアンケート調査では、自然音のほうが心地よさが高く、人工音が注意散漫になることが大きな差として示された。 本実験結果では、身近な自然音に触れることで、DMNの機能が(良い方向に?)変化することを示すことができた。これは人が自然環境と触れ合う事が健康便益の助けになるとの説明に

バイオフィリックデザインのエビデンス/自然との触れ合い関連

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今月発行になった、人の幸福や健康と自然の中でのレクリエーションとの関係性を調査した論文の備忘録。 筆者はUniversity of Exeter Medical SchoolのMathew White博士ら タイトルは”Spending at least 120 minutes a week in nature is associated with good health and wellbeing” バイオフィリックデザインに関連している方にとって興味深いタイトルではないでしょうか。 (概要メモ) 過去7日間の自然との触れ合いと健康及び幸福の関係を自己申告で調査 参加者は19806人、2014年から2015年に実施。 地域差などは考慮し住宅の前庭のような場所で過ごした時間は参入せず 過去①週間に自然との触れ合いが無い被験者と120分以上あった被験者を比較すると、健康や幸福感の高まりに以下の有意の差が出た。 (e.g. 120–179 mins: ORs [95%CIs]: Health = 1.59 [1.31–1.92]; Well-being = 1.23 [1.08–1.40]). この関連性は200-300分でピークに達し、それ以上メリットは増加しなかった このパターンは高齢者や長期的な健康問題を抱えるグループも含め同じ傾向であった 自然との触れ合い時間(120分間)の内訳は関係なし。(一度に長い時間か短時間で数度かは関係なし) この研究成果は、健康のための自然との触れ合いに関するガイドライン策定に有益だ 人と自然の健康に関する研究は被験者数が課題となりますが、本研究は自然環境モニタリング調査に参加したボランティアを対象とすることで、2万人近い被験者を確保したようです。 本論文は公開(2019/6/13)されており全文は こちら で入手可能です https://www.nature.com/articles/s41598-019-44097-3 エセックス大学メディカルスクール : https://www.ecehh.org/