都市における緑の役割
このブログでも繰り返し紹介してきた”都市における緑の機能”ですが、今回はイギリスからのレポート”The Benefits of Urban Trees”を紹介します。
このレポートでは、緑の機能を「経済的便益」「社会便益」「環境便益」「野生生物への便益」「その他(道路の安全性など)」に整理して、科学的/定量的に豊富な引用を用いて報告しています。
特に、以下の事項は日本でほとんど議論されていないため、今後環境デザインとまちづくり進める上での大きな課題になるかと思います。
・消費者行動:WTPなどを利用した調査では、よい緑の整備された商業地区のほうが緑のない商業地区と比較して消費者の支出に対する意欲が11%も高くなる。
・不動産価値:他の条件が同じ場合、街路樹のあるエリアのほうが6%ほど価格が高い。
・犯罪防止:緑は怒りや暴力を軽減する効果がある。
・生産性向上:緑の見える職場環境で働く従業員は23%病欠が少ない。
そのほか、先日のブログでも紹介した道路舗装の劣化防止効果や都市水害防止に関してもコメントされています。
ちなみに、日本では美観地区に指定されてたエリアは私権の制限につながるため、不動産価値が下がるという考え方が一般的で、それを裏付けるヘドニックを用いた研究成果も発表されています。
一方欧米では、厳しい景観条例や維持管理ガイドラインを制定している地区のほうが中長期にわたり質の高い景観・環境が担保されるため、結果として不動産価値が高くなることが常識となっています。
どちらのまちづくりのほうが好ましいのか、、持続可能性の点からも議論をすすめないといけませんね。
■関連サイト
The Benefits of Urban Trees:http://www.warwickdc.gov.uk/WDC/Leisure+and+culture/Parks+and+recreation/Parks/The+Benefits+of+Trees.htm
Unknown
返信削除十数年前は日本でも公園周辺の不動産価値は下がるといわれていましたが、現在では、周辺に住みたい施設のトップになるまでに社会が変わってきました。
日本でもこうした研究発表が発信されることで、今後の変化を期待しています。
Unknown
返信削除コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、落ち葉や虫、また子供の騒ぐ声などがネガティブ要素となり公園隣接地が嫌われてきた感は否めないですね。これは、ハードとしてもそうですがむしろ、使い方や維持管理のソフト面に多くの課題があるからなのでしょうか。
ただ、飲食系の店舗は緑の効用に注目した店舗整備をされているところが増加しているように思います。緑で店が目立たなくなるからNGと感覚で判断するのではなく、消費者行動などのデータに基づく計画設計をすすめなければなりませんね。