注意力・配慮力と自然の中での休息/ バイオフィリックデザイン+α


仕事の生産性向上の重要な資源である、注意力の向上(Attention Enhancement) が、電子デバイスの使用によって損なわれる一方、公園での休息など自然との触れ合いにより回復するが、そこには+αの工夫が必要という趣旨の論文の備忘録

論文タイトルは”How to Waste a Break: Using Portable Electronic Devices Substantially Counteracts Attention Enhancement Effects of Green Spaces”
https://aslathedirt.files.wordpress.com/2018/07/0013916518788603.pdf

著者は香港大学のBin Jiang先生(イリノイ大卒業)、イリノイ大学の Rose Schmillen先生、 William C. Sullivan先生

主な内容は以下の通りです


  • Attention(注意力・配慮力)は業務を行うために重要な資源。これが低い人は重要事項を見逃し、イライラしやすく自己管理に悩む。失言も増え、人間関係にも苦労する可能性が高い。
  • 女性50名、男性31名、年齢17-35歳の81人の被験者に対して緑により注意力向上効果と電子デバイス使用の関係性に関して調査を実施した。
  • 参加者は10分間計算と暗記を行い、その後15分間、4種類の場所で休息を行った(下記画像参照)。休息中参加者の何人かはSNSなど仕事以外の用途でラップトップを使った。また、ラップトップを持ったまま休息したグループ、持たずに休息したグループを設定した。そして、休息後に注意力に関する再テストを行った。
  • 休息後に注意力が回復した唯一のグループはラップトップを持たずに緑の中で休息した人であった(下記グラフ参照)。
  • よって、注意力を回復させるためには自然と触れ合える緑地を準備するだけでは不十分で、電子デバイスをわきに置くようななんらかの工夫を行う必要があるとの根拠が示された(結論)

バイオフィリックデザインを推進する論拠として、「緑が見える、緑と触れ合える空間を整備することでストレス回復効果が発揮される」等の研究論文は数多く出ています。
今回、本研究が示した、自然の中での過ごし方が注意力の回復に影響するとの視点は、バイオフィリックデザインを検討する上で、今後重要な課題となるのではないでしょうか?



休息スペース画像(論文より転載)


休息場所とラップトップの有無、テスト結果の関係性(論文より転載)


■関連サイト
https://landarch.illinois.edu/technology-undermines-the-restorative-benefits-of-nature/



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