TEEBだけじゃない生態系サービスの経済便益評価



生態系と生物多様性の経済学/TEEBの最終報告書が公表され、注目を集めています。

たとえば、日経新聞では

生態系保全、年3.6兆円投資なら経済価値400兆円

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE3E4E5E6E0E2EAE2E0E3E3E2E0E2E3E29C9CEAE2E2E2;at=ALL

という記事を出しています。

生物多様性の経済価値に関しては、今までは1997年にロバート・コスタンザがネイチャー誌で発表した研究データ年間33兆ドル(当時の全世界のGDPの約2倍)を用いるケースが多かったですが、これに加えて、TEEBの引用も増えるのでしょう。

ケーススタディとしては、オーストラリア・キャンベラの40万本の植林の価値などが提示されています。
TEEBの発表により、生物多様性の価値がわれわれの想像よりもずっと大きいこと、少ない投資で大きなリターンが得られることを理解できます。
生物多様性と経済との結びつきや全体像を議論するための材料として大変重要な発表であったと思います。

一方、個々のプロジェクトでどのような便益があるのかを理解するには、より小さいスケールでの評価手法や評価データが求められると思います。

私がよく参考にさせていただくのは、米国農務省(USDA)が発表している一連の研究データです。

たとえば、北カリフォルニアの街路樹では以下のような数値が発表されています。

Average annual costs over 40 years for tree care range from $10 to $33 per tree.
• $10 (yard) and $17 (public) for a small tree
• $11 (yard) and $24 (public) for a medium tree
• $13 (yard) and $28 (public) for a large tree
• $15 (yard) and $33 (public) for a conifer

Average annual net benefits (benefits minus costs) per tree for a 40-year period
are as follows:
• $29 to $41 for a small tree
• $42 to $60 for a medium tree
• $101 to $122 for a large tree
• $142 to $146 for a conifer

費用と利益の差を見ると、大きな樹木の方がより価値が高いということですね(あたりまえですが、、)

ほかにも、英国、豪州などでいろいろな研究データが発表されています。
「都市緑化技術(no74)」でも一部ご紹介しましたが、来年1月のセミナーで、さらに詳しく紹介しようと思っています。

TEEBの成果を実際のまちづくりにどう反映させるのか、また、われわれの暮らしの中でどのように捉えるのか、関連研究の発展と今後の実践的な取り組みが必要ですね。


明日からはCOP10対応でほとんど名古屋です。会場でお会いできれば声をかけてくださいまし、

■関連サイト

TEEB:http://www.teebweb.org/

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