広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン/森林総研
(画像はガイドラインから転載)
様々なランドスケーププロジェクトに関わる中で生物多様性保全への配慮が求められる機会が増えています。
ランドスケープに関する技術としてはエコロジカルネットワーク評価技術やモニタリング、近自然工法などの情報はある程度整備、標準化されつつあるとおもいます。一方、植栽材料の調達に関する情報はほとんど存在せず、なるべく近くの圃場から調達する、環境省の指定種をはじめインベーシブな種は用いないといったレベルの対応にとどまる事が多いかと思います。
そのような状況下において、ちょうど1年前に森林総研から「広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン」が発行になりました。
もともと、林業種苗法によりスギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツの針葉樹については、苗木の移動範囲の制限がありますが、気候区分に則したもので、遺伝子レベルの検討はなされていませんでした。一方、広葉樹に関しては首都圏のプロジェクトで九州の圃場から材料がデリバリーされるなど心配される声もすくなくありません。
本ガイドラインは広葉樹10種について遺伝的多様性やなどを検討し、地域区分を行ったものであり、いままで曖昧に議論されていた広葉樹の遺伝的多様性を保全するためのゾーニングを示し、種苗の出荷範囲の目安を提案しています。(ゾーニングではフォッサマグナに沿ったライン、若狭湾と伊勢湾をつなぐラインなどが樹種ごとに示されています。)
また、今後遺伝子かく乱のリスクを回避するために、以下の提案がなされています。
(1)産地表示:各種苗の採種地を明確化する
(2)委託生産:採種地が明らかな種子を用いた委託生産
(3)緑化事業の工期の弾力化:植栽に用いる樹種特性(開花・結実特性)を勘案した弾力的な工期の設定
(4)種子バンクの設立
このような取組を進めるにはクライアントの理解と協力が必要となりますが、今後は設計・施工サイドからも積極的に提案すべきものなのでしょう。
もちろん、法的に拘束力があるものではありませんが、一つの目安として貴重な情報と思います。
本課題に関してはセキスイハウスさんが実施されている取組も参考になりますね。
■リンク先
広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン:http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/2nd-chukiseika20.pdf
積水ハウスの生物多様性への取組:http://www.sekisuihouse.co.jp/sustainable/2011/basic/pdf/2011/2011_WEB_06.pdf
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