工場立地法と緑地

 工場立地法では一定規模以上の工場に対して敷地内での緑の整備(ざっくり言うと緑化率20%以上)を義務付けています。


この法律は、高度経済成長期に、深刻化した公害問題や地域自然環境保全に対する対策として1973年に制定され、その後改正が重ねられています。

小規模な工場敷地9,000㎡以上or建築面積3,000㎡以上のみ対象や流通施設や太陽光発電施設は対象外となっているなど課題はあるものの、緑の確保に関して一定の成果を上げてきました。



2017年の改定では届出受理等の権限を市町村に全面移譲しています。同時に地域の実情に併せて市町村が独自に条例で緑地率を引き下げることが可能となりました。

これにより、条例で緑地率を引き下げた自治体を中心として、徐々にではありますが工場の緑地面積は減少してきているようです。


(引用:https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/koujourittihou/hou/shikkoujoukyou/tyousabunseki_h30.pdf)

基準が下がると緑地面積が減少するというのは、環境問題の外部不経済が原因と指摘することもできますが、それだけなのでしょうか?

法律で義務付け、規制をチャンスとして発展してきた工場緑地は、工場設備の環境性能が向上したため大気汚染や騒音などの遮蔽効果といった意味合いが薄れ、従業員の休息、地域社会への貢献、生物多様性保全など多様な役割が期待されるようなりました。
しかし、明確な目的がないまま、あいまいに維持管理されてきた空間は、規制がなくなった瞬間に予算を確保する理由もなくなり、衰退しているのではないでしょうか?

よって今重要なのは、人が集まる工場に自然や緑が存在する意味や価値を再発見し、工場緑地を再定義しなおす事かと思います。

例えば最近議論されるような、次の役割を位置付けるのはどうでしょうか?
・ウェーキングミーティングを安全に実施する場
・樹木管理により発生する薪を利用した焚き火コミュニケーションの場
・発生する残渣をたい肥利用する食料生産の場
・自然を五感で感じるクリエイティブなワークの場
・従業員の幸福度を向上する動物共生の場 



マクラーレンの工場
(引用:https://www.theverge.com/2016/9/21/13000920/apple-mclaren-acquisition-rumor-makes-sense)

フェンディが計画している新工場

  
(引用:https://modulo.net/en/realizzazioni/fendi-factory)

コロナ禍において、多様なワークスタイルやワークプレイスが関心を集めています。上記の取り組みにはハードだけでなくソフトのデザインも求められますが、自らが体験しながら緑地が提供できる新たな価値を探求してきたいものです。

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