ペルーの伝統的GI工法/Las Amunas

近年の気候変動(クライシス)への適応策として我が国の伝統的な治水工法の「霞提」が注目を集めています。
乾期の水確保が大きな課題となっている南米においても、ペルーの伝統的治水工法"Amunas"が再び注目されているそうです。




この工法は1400年ほど前のインカ以前の文化が、干ばつリスクを軽減するために実施していた取り組みで、雨期の間に山の斜面に水を迂回させ浸透させることで、乾期の水の確保に貢献するものです。

このグリーンなインフラの効果の定量的な分析に関して、昨年”Potential contributions of pre-Inca infiltration infrastructure to Andean water security”というタイトルのレポートが発表されています。

これは、Boris Ochoa-Tocachi(インペリアルカレッジロンドン土木環境工学科)らが取りまとめたもので、アムナスの地下浸透や流出遅延効果を以下のように科学的に評価しています。

・アムナスを通ることで浸透した水は、平均45日間保持され乾期の流量確保に貢献する。
・リマ市の水源地域に対しては、潜在的に99×106m3/年の河川流量を遅らせる。
・乾期には流量を平均7.5%増加させるポテンシャルがある。

このような伝統的な工法は適切な現代工法(グレーインフラ)と組み合わせることにより、今後深刻化すると想定されている気候変動への適応策、水管理強靭化の幅を広げる可能が高いと思います。
重機のない時代に開発されたこのようなnature basedな工法は、合理的で省コストであることが多いため、今後の科学的な研究蓄積が期待されます。

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