ビッグデータを用いた都市多様性の定量分析手法

東京大学先端科学技術研究センター 吉村先生らが2021年12月7日に発表された表題論文の備忘録

 Revisiting Jane Jacobs: Quantifying urban diversity - Yuji Yoshimura, Yusuke Kumakoshi, Sebastiano Milardo, Paolo Santi, Juan Murillo Arias, Hideki Koizumi, Carlo Ratti, 2021 (sagepub.com)


【概要】

  • ジェイン・ジェイコブズが提唱した、都市多様性の4条件(用途の混在、小さな街区、年代の異なる建物、密集)を定量的に解き明かそうという研究
  • スペインの50都市を対象として、Shannon-Weaverモデルを用いて街区の小売店の店舗数と種類の豊富さを都市多様性として評価。
  • 200mのグリッドに分け、匿名化されたクレジットカードの決済情報を利用して、都市多様性との相関を分析したところ、グリッドの多様性が高いほど店舗の販売量が高いことが判明した。
  • 多様な地域では異なる店舗タイプ間の探索(シナジー効果)をもたらし、経済効果と生活の質を高めている可能性がある


【メモ】

クレジットカードの決済情報というビックデータを用いることで説得力のあるデータが示されています。日本の現状ではなかなかハードルが高そうですが、このような有益な研究が発表されることで、オープンデータとしての整備と開示が進むとよいなと思います。

今回は小売店の用途の混在に絞っていますが、住宅や行政、病院など広い意味での用途混在を図るにはどうしたらよいか考えてしまいました。また、街区のスケール多様性や建物の年代多様性、密集度などに適用したデータも見てみたいと思いますし、コロナの影響(都市多様性がコロナに+か-か)なども面白いかと思いました。

一方、Shannon-Weaverモデルで議論になる通り境界をどう設定するのか?グリッドの規模の設定、なども課題となるかと思います。都市計画のルールを議論するために非常に重要な示唆に富む研究ですので、今後の展開にも要注目です。



■プレスリリース

ビッグデータを用いた都市多様性の定量分析手法の提案~デジタルテクノロジーでジェイン・ジェイコブズを読み替える~ | 東京大学 先端科学技術研究センター (u-tokyo.ac.jp)


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