緑地と害虫の切っても切れない関係/wildlife conflicts in Tokyo


仕事柄、緑地の必要性に関していろいろな方と話す機会があります。
ところが年々、緑地は虫が出るから不要だという人が、増えていると感じます。

自分が働く、もしくは生活するエリアに緑が近接していると、虫に刺されたり室内が不衛生になったりするから嫌だ、公園は隣ではなく歩いて行ける程よく離れた距離にあればよいと考えているようです。


こんな傾向を裏付けるような論文がネイチャー誌に発表されました。
プレスリリースには以下のように紹介されています

(以下一部転載)

首都大学東京(上野淳学長)大学院 都市環境科学研究科の沼田真也准教授を代表とする高度研究プロジェクトは、東京都の福祉保健局のデータを用いて、東京都の害虫・害獣のうち、屋外害虫に関する相談件数が近年増加傾向にあること、そしてハチやヘビなどの相談件数と緑地面積には関連があることを明らかにしました。
 この研究成果は、8月2日、"Nature"グループのオンライン科学誌"Scientific Reports"に掲載されました。
 生物多様性は近年自然保護のキーワードとなっており、都市政策において生物多様性に関する取組の重要性が高まっています。しかしながら、近年、生物多様性は必ずしも人間生活にとって正の効果(生態系サービス)を与えるわけではなく、害獣や害虫の増加など負の効果(負の生態系サービス)を与えうることが指摘されています。特に、都市域においては生物多様性の保全に寄与し、人間に快適な生活を提供する都市緑地に期待が集まっていますが、都市緑地が害獣・害虫の種類や数にどのような影響を与えるかは分かっていませんでした。 沼田真也准教授(首都大学東京大学院 都市環境科学研究科)を代表とする高度研究プロジェクトでは、都市の生物多様性と地域社会による利用の現状、および生物と地域社会との軋轢について研究を行っています。保坂哲朗特任准教授と沼田真也准教授は東京都の福祉保健局のデータを用いて、東京都の害虫・害獣のうち、各市区町村のハチやヘビなどに関する相談件数と緑地面積には正の相関があること、そして、これらの屋外害虫に関する相談が近年増加傾向にあることを明らかにしました。
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記事の通り、緑地の整備が都市生活者との間に軋轢を生んでいる可能性があること、その背景に、蜂の分蜂に関する過剰な報道など、生物多様性に関するリテラシーが低下しているとの指摘は頷けます。

小職も年間を通して屋内外で自然環境関連のデザインや情報共有のワークショップを開催しています。
その中で、知らないことが恐れにつながり、知ることが共感や好感につながることを強く感じています。

都市生活者にとっても、生物多様性はリスクではなくメリットであることを共有する取り組みが、ますます求められます。

写真は大学院時代の野外WSのものです





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